midnight blue

映画と恋と

花束みたいな恋をした/恋はいつか生活に負ける

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東京・京王線明大前駅で終電を逃したことから偶然に出会った 山音麦 (菅田将暉)と 八谷絹 (有村架純)。好きな音楽や映画が嘘みたいに一緒で、あっという間に恋に落ちた麦と絹は、大学を卒業してフリーターをしながら同棲を始める。近所にお気に入りのパン屋を見つけて、拾った猫に二人で名前をつけて、渋谷パルコが閉店しても、スマスマが最終回を迎えても、日々の現状維持を目標に二人は就職活動を続けるが…。まばゆいほどの煌めきと、胸を締め付ける切なさに包まれた〈恋する月日のすべて〉を、唯一無二の言葉で紡ぐ忘れられない5年間。最高峰のスタッフとキャストが贈る、不滅のラブストーリー誕生!
──これはきっと、私たちの物語。

!映画の展開に触れています!

『花束みたいな恋をした』を観た。身に覚えしかない選民意識に穴があったら入りたいと思う前半と、言ったことがある台詞と言われたことがある台詞が繰り出される後半に胃が痛くなった。

出会った頃や同棲初期の麦と絹の無敵っぷりは眩しい。駅徒歩30分の苦行を、拓けた眺めと広いベランダでペイできてしまうくらい。帰り道の30分を毎日おしゃべりして楽しめるくらい(働き始めてからの麦は過去の自分を恨んだと思う)。価値観が似ている二人だから、家具集めも近場のお店探しも、あんまり描写はなかったけれど掃除や料理だって楽しかっただろう。だからこそ、就職を境に不穏さが漂い始めるのは切なかった。恋はいつか生活に負けてしまうのだ。

働き始めた麦はどんどん変わっていく。同期が結婚する、という下りから感じたのは、麦が社会一般的な"男"になりたかったのだろうということだ。男は家庭を持ってこそ一人前、みたいな。妻のリクエストで映画に付き合って(『希望のかなた』を観た感想が「面白かったね」で済むわけない、興味を持てなかったんだろうね)、小説よりも自己啓発本を手に取る(あのときの絹の顔!!!)ような男に。絹が事務の仕事を辞めてイベント会社に転職する、という話をしたときに麦が怒るのは、自分が目指している一般的な家庭像が崩れると思ったからだろう。家計を考えれば絹が派遣でも働いていたほうが助かるはずだけれど、夜分に家を開けるような働き方をされるくらいなら専業主婦として家にいてほしいのだ。明示はされていないから、そこまで考えるのは意地悪かもしれないけれど。
映画を振り返ってみると、どうも麦の先輩のDVが浮いているように思えるのだけれど、あれもtoxic masculinityを描きたかったのだろうか。殴らないだけ麦はマシ、なんてひどい話だと思うけれど。麦は絹の話を聞いていたらどう思っただろうか。

ここからは映画と関係ない話。わたし(28歳、会社員)と連れ合い(30歳、会社員)は大学で知り合って、8年付き合ってから結婚した。今年で付き合い始めてから10年目になる。すきなバンドが同じで、ご飯を食べに行くとだいたい同じ料理を選んだ。簡単にいえば価値観が似ていた。だからなのか喧嘩もそんなにしなかったけれど、わたしが大学卒業後にフリーターとして過ごしていた時期には、前述の麦と絹よろしく言い争ったこともあった(だから胃が痛かった)。紆余曲折を経ていま一緒に暮らしていて思うのは、わたしたちは思ったほど似てないな、ということだ。お互いに変わってきたのだと思う。

趣味が合う、価値観が合うというのは甘美だ。わたしたちはその他多数の人たちとは違う、という陶酔。その関係が長く続くと、一方が変わっていくことを許しがたく感じてしまうのかもしれない。しかしいくらともに過ごしていようと、価値観が合おうと、わたしたちは別々の人間なのである。絹は変わっていく麦に戸惑ったし、麦は変わらない絹がもどかしかっただろう。二人の関係はもはや修復できないと悟ってしまうファミレスのシーンは、人が出会い恋に落ちて別れるまで、その過程をすべて内包していて悲しくも美しかった。もっと話し合ってみれば、状況が変わる可能性だってあったと思うけれど(別れてからの宙ぶらりんな三ヶ月の気楽さを見るに、きっと)、一方でさらにお互いをズタズタに傷つける恐れもあったわけで、花束を枯らすよりはドライフラワーのように思い出を愛でようと意見が一致したのだろう。2020年の二人が思いの外さっぱりと再会していたのも、別れ方が良かったからなのかもしれない。麦の語る結婚は空虚だったけれど、わたし自身の実感として感じるのは「ずっと同じようにすきではいられない」というのは正しい。でもそれは悪いことではなくて、一人の人間への気持ちをすきという一言で表せるわけもないというか。恋が生活に負けるって、必ずしも不幸ではないのかもしれないね。恋は生活に負けて、それでも残る情を愛と呼ぶのかもしれない。なんて。

ニューヨーク旅行4日目

1日目はこちら
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エンパイア・ステート・ビル

 ニューヨーク滞在4日目にして、初の快晴!ただ午後からは雨の予報だったので、急遽エンパイア・ステート・ビルへ行くことに。展望台へ行く前に、近くにあったカフェで朝ごはん。

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晴れてる~!とテンションが上がってホテル前で撮った1枚(あんまり晴れ感ないね…)
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マフィンが大きい!
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カフェから見上げたエンパイア・ステート・ビル
 ビルに入って念入りなセキュリティチェックを受けたら、いざ展望台へ。まずは80階までエレベーターで一気に上がります。エレベーターの天井がスクリーンになっていて、ちょっとした動画が流れて楽しい。80階は展示フロアというか、エンパイア・ステート・ビルの歴史が書かれたパネルが飾られています。窓から眺めるとすでに良い眺め!
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 うきうきと86階の屋外展望台へ向かおうとするも、エレベーターは長蛇の列。係の方が「エレベーターは20分待ちだから階段でどうぞ!」と言っていて、6階くらいなら行けるかと階段で登ってみることに。しかしこれがめちゃつらかった…。他のお客さんと励まし合いながら、ようやく展望台へ到着。高~~~い!!!!!狭いので人の合間を縫って写真を撮ります。携帯を落っことしそうで怖かった…。絶景だったけれど、朝だからなのか靄がかかってしまって少し残念。夜景も綺麗だろうなあ!帰りは大人しくエレベーターに乗って降りました。
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ハイライン~ホイットニー美術館

 エンパイア・ステート・ビルを出て、チェルシー方面へ歩きます。目指すはハイライン!ハイラインは、廃路になった線路を緑化して歩道にしたものです。ハイラインの端にはホイットニー美術館があるので、美術館へ向かうついでに端から端まで歩いてみることにしたのですが、すごく素敵だった~!近くで働いていたら、お昼にここでのんびりしたい。あちこちに座る場所があって、アイスを売っている出店があったりします。楽しい。
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あちこちに階段があり、登ったり降りたりできるようになっています
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 端まで歩き切ってハイラインを降りると、石畳のかわいい街に出ました。このあたりはグリニッチ・ビレッジだったのかな?目に入ったお店でお昼を食べてから、ホイットニー美術館へ。
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映画のセットみたいでかわいい街
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 ニューヨークの美術館はメトロポリタン美術館と近代美術館に行けば十分かと思っていたのですが、エドワード・ホッパーが多く展示されているとのことで行ってみることに。なんと8作も見れました。最上階のバルコニーからの眺めも良くて、素敵な美術館です。
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Railroad Sunset / Edward Hopper グラデーションが綺麗で惚れ惚れ
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New York Interior / Edward Hopper 観たなかではこれがいちばんすき!
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Early Sunday Morning / Edward Hopper ガイドブックを観ると載っているやつ
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バルコニーから!登ってきたエンパイアが見えます

ティファニーで指輪を

 ホイットニー美術館を出て、ハイラインをまた歩き(気に入ったので…)地下鉄に。次に目指すは五番街です。実はニューヨーク滞在中に連れにプロポーズをされ、ティファニーの本店で婚約指輪を買って帰るつもりだと言われたのでした。ティファニーはニューヨークのブランドなので、日本で買うより安いんですよね。しかしそんな高価な買い物を拙い英語力でできるのかしら、しかも予約とか何もなしに行っていいものなのか…?!と不安を覚えつつ、いざ本店へ。入店前に連れがGoogle翻訳に「婚約指輪を探しています。予算は××××ドルです。ありますか?」と打ち込んでいました。文明の利器…。

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ヴィトン!
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ディオールバーバリー
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そしてティファニー
 店内は観光客が多く、意外とカジュアルな雰囲気。が、エレベーターで結婚指輪&婚約指輪のフロアへ行くと落ち着いた雰囲気に。どきどきしつつ用意していたGoogle翻訳を店員さんへ見せると、力強い「YES」の返事が。カウンターに案内され、何を飲むか聞かれます。コーヒー、紅茶、水、シャンパン(!)とありましたが、緊張しているので二人とも水を。ああもう後に退けない…と思っていると、店員さんが指輪を持ってきてくれました。6種類くらいあったかな?いわゆる婚約指輪!というデザインのセッティング(「ティファニーで最も有名な指輪」とのこと)と、ハーモニーというリング部分にデザインがあるもので迷った末、後者に決めました。ちなみに値段は税込でも予算内で、店員さんが(自分に)「Good job!」と言っていました。アメリカ~!
 支払いを済ませたもののわたしのサイズの在庫がなかったようで、翌日の15時に再度来るように言われました。はや!日本でサイズを直すと数週間かかるそうですが、本店は工房を併設しているそうでこのスピード感なのだとか。店員さんにお礼を言ってエレベーターへ。係の方に「どこから来たの?」と聞かれ日本からだと答えると、「新しい天皇になったんでしょ!おめでとう!」みたいなことを言われる。すると乗り合わせていた別のおじさんが「知ってる!なるひと!」と乗ってくる。皆さんよくご存知で…。
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きらきら~~~

モリッシーを観る!

 ティファニーを出て、一旦ホテルへ。少し休んでブロードウェイにモリッシーを観に行きます。劇場から「空港並みのセキュリティチェックがあるから早めに来てね」というメールが来ていたので、開演40分前くらいに劇場に到着。思っていたよりすんなりとセキュリティチェックを終えてロビーへ。老若男女、いろんな国の人がいるように見えます(まあニューヨークはどこもそう)。10分くらい待ったあと、座席のあるフロアへ向かうようアナウンスされました。客席はシャンデリアがついていてキュート!この時点で開演30分前ですが、席はガラッガラです。定刻の20時になると、前方のスクリーンでいろんなアーティストの演奏動画が流れ始めました。全然わからなかったけれど、ボウイの『Rebel Rebel』にはうきうき。20時40分くらいかな、スクリーンの動画に合わせて照明が落ちてようやく開演!

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ラント・フォンタン劇場
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シャンデリアがかわいい
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ロビーもかわいい!
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お客さんも集まってきました
 モリッシーが登場すると大歓声が。熱狂的なファンが多いんだろうなあ。モリッシーが何か話すたびに叫んだり、演奏に合わせて歌ったり。わたしはスミスがすきとはいえモリッシーに関してはにわかもにわかなので、雰囲気を楽しむ感じだったけれど楽しかったです。スミスの曲は4曲くらいやっていたかな。やるんだねえ。しかしモリッシー、めちゃくちゃパワフルですごかった。スクリーンに動画(映画かな?)を投影しながら演奏したりスモークを火事か?!ってくらい焚いたり、演出も派手で楽しい。モリッシーとは関係ないけれど、ライブ中に新鮮に感じたのが観客が演奏中でもガンガン飲み物を取りに行くこと。演奏を聞き逃しちゃう、みたいなことはあんまり思わないのかなあ。総じて観客の振る舞いが自由で、なんだか良かった。アメリカ~!
 このブロードウェイ公演は7日間のスケジュールで、わたしが行ったのは初日だったのですが、アンコールでモリッシーが「僕は明日もここに来ますが、君たちは来ないよね。でもいいんだ」みたいなことを言っていて、これだけ歓声を浴びていてもそういうこと言うんだ…めっちゃモリッシー…ってなんだか感動した。7日分のセットリストを見たら結構組み替えていてすごかった。『Girl Afraid』、聴きたかったな。
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『Everyday Is Like Sunday』(だいすき!)での一幕
 終演は22時半ごろだったと思うのだけれど、この時間でもタイムズスクエアは人通りが多く、ミュージカル終わりらしき人もあちこちにいて、全然怖くなくて安心しました。ホテルまで徒歩で戻り、ホテル内のお店でサンドイッチを買って夜ごはんに。残すはあと1日!!!
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ぎらっぎらのタイムズスクエア!すき!

ニューヨーク旅行3日目

1日目はこちら。
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2日目はこちら。
matata-ki.hatenablog.com

自由の女神を見に行く

 7時に起床、8時に出発。この日はクルーズで自由の女神を見てから、ブルックリンへ行く予定でした。まずホテルの向かいのスターバックスでコーヒーとマフィンを買い、食べながらクルーズの船着場を目指して30分ほど歩きます。参加したのはCircle Line Sightseeing Cruiseが運航するLiberty Cruise。ハドソン川を下り、マンハッタンの南にある自由の女神を通って戻ってくるクルーズです。他にも観光クルーズがいろいろあるみたい。このクルーズも観光パスが使えます。自由の女神を見る方法はいくつかあって、最もスタンダードなのは自由の女神があるエリス島に行くクルーズに参加すること。これだと女神を近くから見れたり、女神の台座や王冠に入ったりすることもできます。島には移民博物館もあります。ネックなのは時間がかかること。なんでもセキュリティチェックが長蛇の列なのだとか。今回は他に回りたいところがたくさんあったので、Liberty Cruiseで近くを通れば十分だろうとエリス島はパスしたのでした。
 前日にクルーズ出航時間を調べておき、30分前にチケット売り場に到着。窓口にはすでに列ができていました。観光パスを提示し、チケットに引き換えたところ…出航時間を勘違いしていたようで、まだ40分ほど待たなくてはいけないことに。仕方ないので、ハドソン川を散歩して時間を潰します。ハドソン川といえば、映画『ハドソン川の奇跡』の基になった航空機の着陸が有名ですよね。たしかに航空機が着陸できそうな広さ&長さの川だな ~と思いつつ、両脇にはもちろん建物があるので本当に危うい橋だったんだろうな。映画の劇中でサリーがランニングするシーンが何回かあったと思いますが、ハドソン川沿いもニューヨーカーがガンガン走っていました。ニューヨーカー、健康意識が高い。さて、散歩をしているうちに集合時間になったので船着場へ。

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思った以上に立派なフェリー
 係員にチケットを提示して、フェリーに乗り込みます。係員が日本語で「おはようございます」と声をかけてくれたので、元気に「おはようございます!」と返事をすると喜んでくれました。「(これは英語で)日本人がたくさん来る」と。連休だからね。たしかにクルーズ参加者にちらほら日本人が。船上のデッキ?に出ると、さささ寒い!まだ動いていないのに凍えそうな風です。あと、めっちゃ揺れます。やばい。定刻を少し過ぎた頃、フェリーが動き出しました。早い!寒い!揺れる!数枚写真を撮って船内に退避しました。船内は暖房が効いていて、揺れも控えめで快適です。フェリーは夏の乗り物のようです…。
窓越しにニュージャージーを眺めていると、自由の女神が近づいてきました!気合いを入れてデッキへ。風にめげつつ女神を見に行きます。写真や映像で数えきれないほど見ている女神像ですが、実物を遠目にでも目にすると感動しました。ニューヨーク!!!って感じです。女神像のあたりはゆっくり進んでくれるので、結構たっぷり写真が撮れます。満足したので再び船内へ。今度はマンハッタンを眺めながら船着場に戻ります。クルーズの所要時間はだいたい1時間ほどでした。
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出航待ち
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出航!
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エリス島はやっぱり混んでそう

ブルックリンへ

 船を降りて、近くの地下鉄へ。ブルックリンへ向かいます。ブルックリンブリッジの近くで降りて橋を歩いて渡るはずが…間違えて直にブルックリンハイツへ出てしまいました。とりあえず目的地のダンボへ向かって歩きます。有名な通りに出たところで、目に入ったピザ屋さんでお昼ごはん。マンハッタンより若干値段が安い感じがします。だからブルックリンは若者や移民に人気なのかな。

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写真撮影している人がたくさん
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ピザがでかい…
 周辺の雑貨屋さんを何軒か見たあと、次の目的地であるウィリアムズバーグに行こうと思ったのですが、なんと一旦マンハッタンに戻らないと地下鉄では行きづらいようで。バスやタクシーを使えばよかったのかもしれませんが、ブルックリンブリッジを渡りたかったのもあって一度マンハッタンに戻ることに。ブルックリンブリッジはマンハッタンとブルックリンを結んでいる鉄橋で、歩いて渡ることができます。所要時間は30分くらい。晴れていればもっと良い眺めだったんだろうなと思いつつ、写真を撮りながら渡ります。ブルックリン寄りの開けた景色が、マンハッタンに近づくにつれビル街になっていくのがよかったな。
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いざ渡ります
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マンハッタンの摩天楼
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あともう少し
 ブルックリン橋を降りたあと、地下鉄に乗ってウィリアムズバーグへ。ウィリアムズバーグはブルックリン人気の中心的なエリアのようで、右に左に食べ物屋さんや洋服・雑貨店が並んでいます。買い物はしなかったものの、歩いているだけでなんとなく楽しいところでした。ただ、マンハッタンに比べると格段に人通りが少なく、若干心許なかったです。ブルックリンは観光というより買い物目的に来れば楽しそう。とはいえチョコレートくらい買えばよかったな…。
 この日も歩き疲れ、地下鉄でホテルに戻って昼寝。いま思えばずっと時差ボケだったのかもしれません。夕食を食べに行く気力がなく、ホテルの前に出ていた屋台でチキンオーバーライスなるものを買うことに(ニューヨークのB級グルメらしい)。赤いお米の上に、ほぐした鶏肉とレタスが乗っていて、そこにソースをかけて食べます。安いのに量が多くて食べきれなかった…。ニューヨークはこういう屋台がめちゃくちゃ多くて、あちこちでいろいろなものを売っています。食事もだし、ドーナツやホットドッグといった軽食とコーヒーやジュースも売ってたり。ニューヨーカーはこういうところでちゃちゃっとごはん食べたりするのかな。ニューヨーカー、信号もあんまり見てないし生き急いでる感がありました。こういうところはちょっと東京っぽい。でも親切にいろいろ教えてくれたり、話しかけてくれる人も多かった気がします。こんな感じで3日目は終わり。
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ニューヨーク名物なのだとか

ニューヨーク旅行2日目

1日目はこちら。
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セントラルパークへ

 時差ボケなのかうまく眠れず、一時間おきに目を覚ましたりしつつ7時に起床。8時に出発。目指すはセントラルパークです。2日目の予定は、メトロポリタン美術館アメリカ自然史博物館へ行くこと。この2つの施設はセントラルパークの東西に向き合うように建っているようで、せっかくなのでセントラルパークを歩きつつ向かうことにしたのでした。
 ホテルからセントラルパークへは徒歩10分くらい。朝ごはんをまだ食べていないので、とりあえずセントラルパークの周りをぐるっと歩いてみます。地図的にはアッパーウエストになるのかな。ホテルがあるミッドタウンのオフィス街みたいだったけれど、こちらは閑静な住宅街という感じ。しばらく歩いてみて、目に入ったカフェ?ダイナー?で朝ごはんにすることに。ところで、ニューヨークの食事処ではお手拭きが出てこないので(頼むものなのかもしれない)、除菌シートを持参するといいと思います。食べ歩きでも使えるしね。

朝ごはんを食べ終えてから、いざセントラルパークへ。セントラルパーク、ニューヨーカーがめっちゃ走っています。とても綺麗な公園なので走っていて気分も良いだろうなあ。鳥がたくさんいて、リスもいました(大きかった!)。さて、まずはメトロポリタン美術館ですが思っていたよりも遠く、三十分ほど歩いてやっと到着。開館時間を少し過ぎたくらいでしたが、右に左に行列ができています。



メトロポリタン美術館

 メトロポリタン美術館といえば、美術館が多いニューヨークの中でもとくに有名な美術館です。毎年に5月に開催されるメットガラや、映画『オーシャンズ8』の舞台としてもお馴染みですね。一日では到底見切れない量のコレクションを誇ります。入場列に並び、いざ館内へ。観光パスで入場できるのかと思いきや、一度チケット売り場に並ぶ必要がありました。ちょっとめんどくさい。カウンターでチケットに引き換え、日本から来たことを伝えると日本語対応のオーディオガイドを貸してくれました。チケットは買った日から3日間有効のようです。3日間楽しめる規模なのか…!
 まず見たのが『PLAY IT LOUD』という企画展。これはロック史上有名な楽器を集めた展示で、洋楽に疎いわたしですら名前を知っているようなアーティストの使用楽器が飾られています。プリンス、ジミー・ペイジヴァン・ヘイレンビートルズボブ・ディランザ・フーカート・コバーンなどなど。最近の人だとレディ・ガガやセイント・ヴィンセントなんかもありました。展示されているアーティストの曲がBGMで流れ、見ている人たちはテンション高く言葉を交わしたりしていてなかなかご機嫌な空間でした。



 企画展を出てしばらくふらふらと館内を歩いたあと、目当てのヨーロッパ絵画へ。絵画は全然詳しくありませんが、印象派とくにルノワールがすきなので楽しみにしていたのです。圧倒されました。モネとドガも素敵だったなあ。




本当はゴッホフェルメールも見たかったのですが歩き疲れてしまい、ヨーロッパ絵画をしばらく見てメトロポリタン美術館はあとにしました。メトロポリタン美術館、広すぎる上にどこに何が展示されているのか、そもそもそこにはどうやって行くのか、というのがどうもわかりづらく、必要以上に歩かされる印象が(もちろん歩いているだけで楽しいのですが)。行き止まりがなく、部屋がどこまでも繋がっている感じもまるで迷路のようでした。休みつつもっといればよかったな…。アートファンの方はそれこそ一日費やすつもりで来るべき場所です。絵画だけでなく、彫刻、甲冑、楽器、家具まで何でもありました。

アメリカ自然史博物館

 メトロポリタン美術館を出て、再びセントラルパークへ。しばらく歩くとアメリカ自然史博物館に到着。こちらは映画『ナイトミュージアム』でお馴染みの博物館。メトロポリタン美術館と同じくチケット売り場に並び、観光パスで入場。鑑賞前にお昼ごはんを食べるべく、地下のフードコートへ。ビュッフェ形式で、食事をすきなだけお皿に盛り重量で会計するタイプでした。
食事後、地下のフロアから順に見ていきます。剥製や模型が山程飾られていて圧巻です。が、メトロポリタン美術館の疲れを引き摺ってしまい、いまいち楽しめず…。アメリカ自然史博物館も膨大な量の展示があるので、近いからといってメトロポリタン美術館と合わせて一日で見てしまうのはいま思うともったいなかったです。博物館の目玉である化石のフロアを見て退出。




地下鉄に乗る

 疲れ果てたので、ひとまず地下鉄でホテルへ戻ることに。ニューヨークに来てから初めての地下鉄です。ニューヨークでは(ロサンゼルスもだけれど)メトロカードというチャージ式のカードを使って地下鉄に乗ります。料金は一律2.75ドル。どこまでも乗っても、逆に一駅で降りても同じ値段です。ニューヨークは南北に長い地形なので地下鉄がわかりやすく、北に行きたければUptown行きに、南に行きたければDowntown行きに乗ります。ただ、路線ごとにアルファベットや数字で分けられているのですが、同じホームに違う路線が複数乗り入れていたりするのがちょっと難しかったり。一昔前は地下鉄は危険だったそうですが、今回はとくに怖い目にも合わずに済みました。
 さて、無事地下鉄でホテルに戻ると、そのまま昼寝をしてしまい。気づいたら夜になっていました。

レストランへ

 ロサンゼルスへ行ったとき、英語ができないばかりに食事を連日スーパーやファーストフードで済ませてしまったので、今回はレストランで食事をするのが一つの目標でした。昼寝をして体力を取り戻したことだし、今夜レストランへ行ってみることにしました。ホテルから少し歩いたところにイタリアンがあったので入ってみることに。結構賑わっていましたが、テーブルに案内してもらえました。メニューを眺め、内容がイメージできたグリーンサラダとボロネーゼを注文。チップ文化によるものだと思いますが、食事をしているとウェイターさんが「食事はどう?」と聞きに来ます。「GOOD!」と答えつつ、連れが注文したジントニックのアルコールが強い旨を片言で伝えてみると、トニックを足して飲みやすくしてきてくれました。優しい。チップを気持ち多めに払い、お店を出ました。レストランで食事をする、という目標を達成したところで2日目は終わりです。



ニューヨーク旅行1日目

  GWに5泊7日でニューヨークへ行きました。海外旅行は一昨年ロサンゼルスへ行って以来2回目。ニューヨークはとっても楽しい街で、絶対また行こうと思っているので、今回学んだことを忘れないよう書き残しておくことにしました。 

旅行の準備

   ニューヨークは観光スポットがとても多く、か入場料が結構かかるので、観光パスを買っておきました。似たようなパスがたくさんあるのだけれど(city pass、sightseeing pass、big apple passなどなど)、explorer passを購入。購入した日数分観光スポットに行き放題のタイプのパスと、購入した箇所分観光スポットに行けるタイプのパスとあり、今回は後者の7カ所分のパスを選択。あとはニューヨークといえばブロードウェイ!と思いチケットを手配しようとしたところ、滞在中に元スミスのモリッシーがブロードウェイでコンサートをするそうで。そこで今回はミュージカルではなくモリッシーを観ることに。チケットはBroadway Directというサイトで購入しました。

 あとは保険をソニー損保のものをネットで申し込み、モバイルWi-Fiもレンタル(とはいえ、ニューヨークはフリーWi-Fiがあちこちで飛んでいたのであんまり使いませんでした)。

 出国~ホテルまで

   4/29の15時頃の成田発の便で出国。航空会社はデルタ航空です。今回は大型連休中の旅行で費用がめちゃ高く、少しでも抑えるべく経由便で行くことに。乗り継ぎ空港はデトロイト。成田~デトロイト間で12時間、デトロイトでの乗り継ぎで3時間、国内線でデトロイト~ニューヨーク(ラガーディア空港)で1時間半くらい。海外旅行2回目で英語もろくに話せないのに、乗り継ぎなんてでいるのかしら…と不安でしたがまあなんとかなりました。成田~デトロイト間のフライトには日本人スタッフさんが搭乗しているし、デトロイトはなぜか空港内の案内が英語+日本語表記だったので。日本人が多く来るのかな?今回は連休中の旅行だったので、同じ便に日本人グループが結構いました。

 さて、アメリカでは最初に入国した空港で入国審査を受けるので、着陸後入国カウンターへ。デトロイトの入国審査は厳しい、なんて情報を事前にネットで見ていたので怯えていたのですが、運よくご機嫌なおじさんが担当だったので難なく済みました。ロサンゼルスもそうだったのですが、デトロイトの入国審査も電子化が進んでいて、ESTA取得後2回目の入国は専用の機械で質問に答えたあとに出てくる紙をカウンターに渡すだけで審査が終わります。「何日いるの?」とだけ聞かれたかな。アメリカ入国が初めての連れはいくつか質問されていました。「何しに来たの?」「何日いるの?」「どのホテルに泊まるの?」だったかな。入国審査って家族以外は1人ずつ受けるはずなんだけれど、他の友達同士らしきグループが一緒に受けていたので二人でカウンターに行ってみたところ、「(家族じゃないなら)どういう関係?」と聞かれ、連れがわたしを「ガールフレンド?」と答えておじさんに笑われました。かわいいね。結婚してない場合の間柄ってどう説明するのかな。このやりとりで打ちとけたのか(?)おじさんは鼻歌を歌いながら手続きをしたり、指紋を取るときに難儀していたら「親指!」と日本語で教えてくれたりと和やかに入国審査は終了。一旦預け入れ荷物を受け取ってまたすぐ預け(受け取る必要ある?!と思った)、靴まで脱ぐ入念な手荷物検査を受けてから出国ゲートへ。

 デトロイト空港はデルタ航空ハブ空港のようで、東西に長く80近くの搭乗口がありました。乗らなかったけれどモノレールがが空港内を走っているほど。ショップやレストランも多く、乗り継ぎ時間を潰すには困りませんでした。国内便はさすがに日本人スタッフがおらず、口頭の搭乗案内がすべて英語なので緊張しながらも無事搭乗。国際線の半分くらいの広さの機体で窮屈だったけれど、1時間ほどしか乗らなかったので良かった。そしてついにニューヨークに到着!4/29の20時30分ごろ。タイムスリップした気分。

 ニューヨークには3つの空港があって、直行便だとJFK空港かニューアーク空港、経由便(国内便)だとラガーディア空港に着くようです。空港からはタクシーに乗ってホテルへ向かおうと思い、タクシー乗り場の案内&係の人に従って歩いていくと、なぜかバスに乗せられてしまい。困惑していると、どうやら空港から少し離れたところにタクシーターミナルがあったようで、イエローキャブが大量に並んでいるところで降ろされてタクシーに乗車。運転手さんにホテルの住所を見せ、無事ホテルに着きました。たしか30ドルちょっとのところ50ドル払ったのだけれど、いま考えると払いすぎだったかな…まあ浮かれていたから…。ホテルはヒルトンミッドタウン。料金は高いけれど、立地がとても良かったし、セキリュティもしっかりしていたので初めてのニューヨーク旅行としては正解でのホテル選びでした。高いのに冷蔵庫なかったけれど!

タイムズスクエア

 部屋で荷物を降ろして、21時半くらいだったかな。散歩がてら夜ご飯を買いに行くことに。ホテルの前の通りをなんとなく歩いていると、やたらとピカピカした通りが見えてくる…そう、タイムズスクエアです!ホテルから歩いて5分くらい。早速向かってみると、人が多いこと!定番の赤い階段(名称があるのかな?)の上からぱしゃり。「ニューヨークに来た!!!」という気持ちでいっぱいに。

 連れが「本場のマックが食べたい」と言うので、初日のタイムズスクエアのマックで済ませることに。マックなんてどこで食べたっておいしくないのに…と思うけれど、まあ気持ちはわからなくもない。店内に入ると観光客でたくさん。日本のマックみたいにカウンターにメニューがなく、壁のメニューを頼りに注文してみる。1つはセットに、1つはバーガー単品で頼みたかったのだけれど、結局セットが2つ来てしまって初日から言語の壁を感じました…。コーヒーがめっちゃ大きくて半分も飲めなかった。

 持ち帰ったマックを部屋で食べ、初日は終了。2日目に続きます。 

君の名前で僕を呼んで/僕らは太陽のこども

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 83年、夏。家族に連れられて北イタリアの避暑地にやって来た17歳のエリオは、大学教授の父が招いた24歳の大学院生オリヴァーと出会う。一緒に泳いだり、自転車で街を散策したり、本を読んだり音楽を聴いたりして過ごすうちに、エリオはオリヴァーに特別な思いを抱くようになっていく。ふたりはやがて激しい恋に落ちるが、夏の終わりとともにオリヴァーが去る日が近づいてきて……。(映画.comより)

  祝・アカデミー賞脚色賞受賞(ジェームズ・アイヴォリー)!ということで、鑑賞後に原作も読んだ。寡黙で慎ましやかな映画に対して、原作は赤裸々でロマンチックな文章の宝庫!物語に関しては、省かれたエピソードはあれど、基本的には原作に忠実な脚色だと思う。ただ、終盤にはいくつか原作から変更している箇所がある。これは、アイヴォリーが”エリオを肯定すること”に心を砕いた結果なのではないだろうか。あのあまりに優しい夏の終わりに、恋の終わりに、この映画がいま撮られた意味があったように思うのだ。

  終盤の脚色について、順に触れていきたい。まず、エリオとオリヴァーのつかの間の旅行が終わり、エリオが駅で途方に暮れるシーン。原作ではエリオは何食わぬ顔で駅へ迎えにきたアンチーゼ(庭師。映画にもいたっけ?)とともに帰宅する。一方映画では、エリオは泣きそうになりながら家へ電話をかけ、母親に迎えに来てもらうよう頼む。
  次に、駅からの帰り道でエリオがマルツィアに声を掛けられるシーン。彼女は「わたしたちは一生友達」と言うが、このシーンは原作にはない。わたしはこのマルツィアの振る舞いに不満を感じた。マルツィアはエリオに失恋をした身なのに、どうしてこんな”大人な”対応をしなくてはならないのか。しかし、この映画が”エリオを肯定すること”に重きを置いていると考えれば、理解はできる。前述の母親による迎えのシーンもそうで、親に甘えることができる(目の前で泣くこともできる)/親もその思いに応えることができるのはとても健全なことだ。さらに、自分のことを理解して側にいようとしてくれる友達もいる。そう、アイヴォリーはエリオが孤立しないことを願ったのだ。もちろん原作でもエリオはいろいろな人から守られていたけれど、映画ではより明確に、言葉や態度で連帯の意思が表されていたように思う。その意図は、書くまでもないだろう。
  さて、最後は映画でオリヴァーが結婚する旨を電話してくるシーンである。原作では、オリヴァーはエリオの家に泊まりにきて、エリオに直接結婚することを伝える。なぜ電話での報告に変更したのかについては、あまりしっくりくる案はないのだけれど、強いて言うならエリオとオリヴァーの距離を強調したかったのではないかと思う。
  理解のある親と暮らすエリオと、自分を押し殺して生きざるをえないオリヴァー。戯れのようにお互いを自分の名前で呼びあったときとは違い、このときのオリヴァーにとって”エリオ”と呼ばれるのはつらかっただろう。オリヴァーはエリオのようには生きられなかった。そして、エリオに自分のようになってほしくなかっただろう。振り絞るように一度だけ、エリオを”オリヴァー”と呼ぶ声が、とても悲しかった。

  原作では、エリオとオリヴァーの関係はあの冬のあとも緩やかに続く。一方映画では、(続編が企画されているとはいえ)オリヴァーの電話によって、二人の恋は一旦決着する。ラストシーン、暖炉を眺めるエリオ/ティモシー・シャラメのあの顔!映画ならではの手法で、大切な恋と少年期の終わりを、そしてこれからも続いていくであろう人生を描いてみせる。悲しみを悲しみとして受け入れること、涙を流すこと。これは劇中最も心を打たれる父親の台詞(もちろん原作にあり、映画でもとても忠実に再現されていた)にも通じる。君は間違っていない、人生はまだまだこれからだよ。そんな優しい声が聞こえてくるようだった。

ちはやふる 結び/恋する凡人

末次由紀の大ヒットコミックを広瀬すず主演で実写映画化した「ちはやふる 上の句」「ちはやふる 下の句」の続編。瑞沢高校競技かるた部の1年生・綾瀬千早がクイーン・若宮詩暢と壮絶な戦いを繰り広げた全国大会から2年が経った。3年生になった千早たちは個性派揃いの新入生たちに振り回されながらも、高校生活最後の全国大会に向けて動き出す。一方、藤岡東高校に通う新は全国大会で千早たちと戦うため、かるた部創設に奔走していた。そんな中、瑞沢かるた部で思いがけないトラブルが起こる。(映画.comより)

 

素晴らしい完結編だった。『上/下の句』と三本まとめて脚本を書いたとしか思えないほど、三部作として完璧である。いろいろな観点から語ることができる映画だと思うけれど、わたしが最も印象に残ったのは、やっぱり太一の恋路だった。

結びの主役は、どう観ても太一だ。太一にとってかるたと向き合うことは、千早と向き合うことである。太一を中心に据えると、自ずと恋愛が物語のテーマになっていく(もちろん、それだけではないところがちはやふるの魅力だけれど)。三部作を並べて『下の句』だけがなんだか浮いた気がするのは、おそらく太一が中心ではないからなのだろう。

太一が恋煩いで成績を落とす、という描写がなんだか新鮮で良かった。東大の医学部なんて、あまりに極端すぎやしないかと思ったけれど、もしかしたら千早への恋心から遠ざかるために、あえて高いところを狙っていたのかな(両親の希望という台詞があったかも)。悩みながらも受験勉強と両立してきたかるた部を、”新が千早に告白した/千早も満更でもない”という話を聞いて辞めてしまうのもわかる気がした。届かないものに焦がれ続けるのはつらいことで、もちろん楽しいことだってたくさんあっただろうけれど、どこか諦める理由を探しながら千早と過ごしてきたとしたら、その選択を咎めることは誰にもできないだろう。追いかけなければ届くことはないけれど、傷つくことだってないのだから。しかし『結び』が感動的なのは、太一が再び立ち上がるからなのである。叶わなくても、届かなくても、それでも青春全部懸けてもいいくらいのものを見つけたから。

終盤、試合が終わったあと、千早の腕を引き会場から出る太一に、告白するの??!!と思うも、なんと太一は千早を新のところへ連れていく。太一は千早が新の告白を受け入れるのだと思っていて、だから目を伏せている。恋敵に勝ったからといって、千早が太一のものになるわけでは当然なくて、千早の想いが最も大切であることを太一はよくわかっているのだ。なんて真っ当なんだろう。最初からこうするつもりで、太一は戻ってきたんだろうなと思うと泣きたくなる。太一が本当に決着をつけたかったのは、新ではなく、千早への恋心だったのではないか。そして太一のあの涙を見るに、たとえ叶わない恋だったとしても青春を懸けた価値はあったはずで、それは千早や新といった巨大な才能に囲まれ、自問自答しながらもがき続けた太一のかるた人生が報われた瞬間でもあったのだと思う。

さて、千早が新の告白への返事として、一見とんちんかんな、でも彼女にとって、そして彼女を知る者にとって筋の通った答えを返したときの太一の気持ちはどのようなものだっただろうか。千早らしい、と思ったか。まだチャンスがある、と思ったか。はたまた、まだ千早に振り回されるのか、と思ったか。
この三角関係は、友情と恋愛の間を行き来しながら、緩やかに続いていくのだろう。そのうちに、三人がそれぞれに別の誰かと恋に落ちることだってあるかもしれない。それでも三人の繋がりは続いていくはずで、彼らのあまりに邪気のないやりとりに、成就しなくても幸福な恋の形というものを見たように思ったのだ。